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東京高等裁判所 昭和58年(ネ)1240号 判決

当裁判所は控訴人らの本訴請求を棄却すべきものと判断する。

その理由は、原判決一四枚目裏三行目「選別動作と最初の段階において、」の次に「各カードにはカートリツジ後方にある第一のリテンシヨンバー6がカードの第二の側辺に設けられた第一のリテンシヨンノツチ35に係合しているが、」を挿入し、同丁裏一〇行目「この時、」の次に「選別されたカードの後端部付近は選別されるべきでないカードの下辺後端部に近接して設けられた第二のリテンシヨンノツチ36と並ぶ位置にあり、」を挿入し、かつ次に付加するほかは、原判決の理由と同一であるので、これを引用する。

一 被告装置における上方分離段階について

本件特許発明及び被告装置において、選別カードが非選別カードから水平な方向に部分的に分離(本件特許発明では構成要件Eにおける部分的分離段階、被告装置では水平部分的分離段階)された後、最終的に選別カードを引出すに当り、その摩擦抵抗による非選別カードの連出しを防止するため、非選別カードになんらかの形で鎖錠装置を設ける必要がある点において変るところはなく、被告装置でも非選別カードの連出し防止のため、その下辺の後端部に近接して設けられた第二のリテンシヨンノツチ36にリテンシヨンバー駆動装置(22、23、24)により上昇させられた第二のリテンシヨンバー5を係合させる構成を採つている(但し被告装置における鎖錠装置がこの装置だけでないことは後に述べるとおりである。)しかし、被告装置では、下辺の後端部(第二の側辺((磁石34の設置された辺と反対側の辺))の下端部)に除去部分のないカードを用いるのであり(この事実は当事者間に争いがない。)、選別カードの下辺後端部付近は隣接の非選別カードの第二のリテンシヨンノツチ36の位置まで引出されるのであるから、選別カードが非選別カードに係合する第二のリテンシヨンバー5により下辺後端部付近を押上げられるのは不可避的な現象である。

ところで、本件特許発明においては、その構成要件Eが示すように、選別カードと非選別カードは「選別用縁部と平行で実質的に水平な方向の制限された相対運動」により先ず部分的に分離され、次いで構成要件Fが示すように「前記平行方向における水平相対運動の継続により」最終的に分離されるのであるが、右両段階を通じカードの分離運動が直線的水平運動であることは前記引用に係る原判決の理由四1が説示するとおりであり、しかもその運動形態において継続性を要することは、本件特許発明の構成要件E及びFの記載から明らかである。そして、本件特許発明において使用されるカードの下辺後端の除去部分28が必須のものであるとの限定が付されているとは認めがたく、その意味では、本件特許発明においてカードの右除去部分が設計事項であるといえないこともないが、成立に争いのない甲第二号証によれば、本件特許発明の実施例において、(イ)除去部分を設けた場合は部分的分離後、鎖錠ノツチ25と鎖錠杆54の係合により非選別カードの連出しを防止し、(ロ)除去部分を設けない場合は鎖錠ノツチ25の代りにチツプ340を設け、鎖錠杆54の代りに非選別カードの横方向に磁石341を設け、部分的分離段階終了後磁石341が非選別カードのチツプ340を引付けることによつて、同カードの連出しを防止していることが認められる。この事実によれば、本件特許発明においては、いずれのカード及びこれに対応する鎖錠装置を用いる場合であつても、選別カードの部分的分離段階と最終分離段階を通じて直線的水平運動の継続性自体が影響を受けるものではない。このように、本件特許発明で使用されるカードの除去部分が必須のものでないとしても、除去部分のないカードを用いた場合でもカードの運動形態に変化はなく、鎖錠装置として甲第二号証(本件特許公報)に開示されているのは前記(ロ)の方法のみであるから、本件特許発明が被告装置におけるが如き上方分離段階及びこれに対応する後記のような鎖錠装置をも包含する構成を備えているものと認めることは困難であるといわなければならない。

他方、被告装置においては、前記のように選別カードの水平部分的分離段階終了後、同カードの下辺後端部が上昇することが不可避的な現象として生ずるのであるから、右上昇によつて、それまでの直線的水平運動の継続性は絶たれたものと認めざるを得ないのであり、そのことは一旦上昇した選別カードの下降の有無、上昇距離の大小、上昇時間の長短とはかかわりはないものというべきである。したがつて、被告装置における選別カードの上方分離が無意味な動きであり、選別カードの直線的水平運動の継続の妨げとならないとする控訴人の主張は理由がない。

二 本件特許発明の最終分離段階と被告装置の円弧状分離段階の対比

本件特許発明においては前記のとおり、選別カードは部分的分離段階及び最終分離段階を通じて直線的水平運動の継続により引出されるのであるが、これに対し被告装置では、引用に係る原判決理由三の認定のとおり、上方分離段階終了後斜め上方へ円弧状に移動し(非選別カードの前方先端から五五ミリメートル前方、二七ミリメートル上方)最終的に分離されるのであるから、右の運動形態が直線的水平運動でないことは明らかである。しかも前記のとおり被告装置では円弧状分離段階の前に当初の水平的部分分離運動の継続を絶つ上方分離段階が設けられているのであるから、被告装置における水平部分的分離段階終了後の選別カードの運動形態は前記のような本件特許発明における直線的水平運動の継続と認めることはできない。

控訴人は本件特許発明におけるカードの直線的水平運動とは完全な直進運動のほか上昇運動を加味した分離運動も含まれる旨主張する。しかし、前掲甲第二号証の本件特許公報六欄九行ないし一九行の記載によれば、本件特許発明の特徴が選別カードの運動形態が終始直線的に継続している点にあることが認められる。もつとも、本件特許公報の右箇所には「カードの相対運動は直線的である」と記載され、本件特許発明の構成要件Eには「実質的に水平な方向」と記載されているが、右の「直線的」とか「実質的」という文言が何を意味するかについては甲第二号証の本件特許公報中にもこれを説明する記載はないのであるから、右文言から直ちに本件特許発明のカードの運動形態に控訴人主張のような分離運動が含まれると解釈することは困難であり(右文言はせいぜいカードの運動形態が装置の都合により水平状態又は直線状態から若干ずれた場合をも含ましめる程度のことを意味するものと解せられる。)、また、控訴人が指摘する磁石に関する構成要件Dの記載も控訴人の主張を支える根拠とはなし得ない。のみならず、仮に控訴人の主張を是認したところで、前記上方分離によりカードの運動の継続性は絶たれるのであるから、被告装置におけるカードの運動形態が本件特許発明の場合と異なることに変りはないのである。

三 本件特許発明と被告装置における鎖錠装置の対比

本件特許発明における選別カードの分離運動は終始直線的水平分離運動の継続であるから、構成要件Fの鎖錠装置も右運動態様に対応した非選別カードの連出しを防止する機能を有するものを指すと解せられるのであり、したがつて、右のような運動形態と異なる分離運動による選別動作のための鎖錠装置は本件特許発明の技術的範囲に含まれないものというべきである。しかして、被告装置における上方分離段階では乙装置が単独で非選別カードに対する鎖錠機能を有し、円弧状分離段階では甲、乙両装置が協動して同カードに対する鎖錠機能を有することはさきに引用した原判決理由四2に説示するとおりであるから、被告装置の右鎖錠装置は本件特許発明の構成要件Fにおける継続する直線的水平分離運動に対応する非選別カードの鎖錠装置とは異なり、本件特許発明の技術的範囲外にあるものということができる。

なお、前掲甲第二号証によれば、控訴人が主張する本件特件発明の実施例における固定カム85又は位置ぎめ杆300、位置ぎめノツチ301は、鎖錠ノツチ25に隣接するカード10の選別用縁部12の部分をカード支持体51の頂面51Aの正しい位置に水平に緊密に接触させ、カード10の中心合わせノツチ16とカード支持体51に垂直に切込まれた盲溝穴52―1(この中に中心合わせノツチ16と係合する選別杆53が滑動自在におかれている。)、カード10の鎖錠ノツチ25とカード支持体51に右方に傾斜して切込まれた盲溝穴52―2(この中に鎖錠ノツチ25と係合する鎖錠杆54がおかれている。)を対応させることによつて、部分的分離及び最終分離段階の際の非選別カードに対する鎖錠を正確に行わせ、分離運動を円滑ならしめる機能を有するものと認められる。したがつて、控訴人主張の前記各装置は被告装置における乙装置とは機能を異にしており、両者がともに非選別カードの鎖錠に対する補助的機能を有することを前提としてなされたこの点に関する控訴人の主張は理由がない。

四 以上によれば、控訴人らの本訴請求はその余の点について判断するまでもなく理由がなく、これを棄却した原判決は正当である。よつて、控訴人らの本件控訴を棄却する。

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